サバゲーの話

10年以上前のこと。(筋者に解りやすく書けば、JACのMP5が発売された直後。サバゲーを始めたのは、MGCの93Rが発売される前だった)

サバイバルゲームという、遊びがある。
数人から数十人でチームに分かれ、精巧にできた玩具の銃を用いて、6mmのBB弾と呼ばれるプラスチック製の弾で撃ち合う、平たく言えば『戦争ごっこ』という遊びだ。(詳しくはググッてね)

おもちゃといえども、弾に当たると痛い。結構痛い。サバイバルゲームの初期の頃は、凶悪な改造をした銃が蔓延しており(スチール缶をたやすく打ち抜く。最近は駆逐されていると聞く)至近距離で喰らうとほんとーに痛かった。
そんなわけで、痛い目に遭いたくなかったら敵に見つからないように、先に見つけて倒すということをすぐに学習する。

そのためには、目立たず泥だらけになっても大丈夫な装備が必要で、その装備も迷彩服とか戦闘服とか、実際の兵隊の格好をするのが一番であることにすぐ気がつく。

長い前ふりでしたが、ここからが本題。

ある日仲間と、大型廃屋でゲームをすることにした。
せっかくだから夜から出かけて、夜戦と昼戦両方やろうということになった。
で、装備に身を包み、焚火を焚きながらナイフで肉を切り取って焼いたり、コッフェル(山用の食器。アルミ製が多い)でウイスキーを暖めて飲んだりしていた時のこと。

結構な爆音を立てて、見るからに珍走な車がやってくるではありませんか!
そうなのです。やたらと画数が多く難解な漢字を用いた言葉を、壁にペンキのスプレーで書き取りをした後があちこちにあった時点で気づくべきだったのです。
そうです。その廃屋はヤンキーの秘密基地だったのです。
緊張が走ったわれらでしたが、すでに酔っぱらってます。

そこへ、肩を怒らせ迷い込んできた余所者(われわれのことだ)に対して、かれら特有の言語感覚で騒ぎつつやってきたかれらでしたが、急に足を止めました。
なんだ? とその場にいた数人が一斉に彼等を見ると。
「誰に断って入りこんどんじゃぁ! あン……(しばし無言)……あの〜、ちょっと中入ってもいいすか?」

態度激変。

もちろん構いませんよ。と言うと、妙にペコペコしながら、
「失礼しまッス」と見かけと正反対の対応。

どうやらわれらがかなり怖かったらしい。(アブナイ人に見えた可能性もあるが)

そんなわけで、その事件以来ヤンキーですらああなのだから、ましてや善良な一般市民はこの比ではあるまいということで、随分気を遣うようになったものです。(きちんと所轄の警察署に届けを出すとか、ご近所らしき所にあいさつに行くとか)

こんな事件があった、さらに後。
とある山中で、夜戦をした時。
先の茂みで、ガサガサという音がした。
警戒線の最前線にいた私は、敵と判断。気がつかれないよう匍匐前進で近づき、距離数メートルに達した所で銃にくくりつけたフラッシュライトを点灯して発砲しようとすると……ハァハァしているカップルでした。

ちなみに、このころメンツが仕事などの都合で夜戦が多くなった結果、目立つ顔(夜では人の顔は光って、ものすごく目立つ)をごまかすために、フェイスペイントをしたりしてました。

カップルは凍りついてます。
あたりまえですね。
誰もいないはずの所で、兵隊(にしかみえない)に照らし出されて銃(玩具だけど解るはずもない)を突きつけられればねぇ。

ほんとうに、発砲しなくて良かったっす。

あわてて大声を上げ、人がいることを宣言して、カップルに謝罪しつつその場を立ち去ったのですが……。

数分後。

「なによあれ! △×■&○∀∇∩〜!!」
……張り手のような音。

哀れっぽい口調で女性名を呼ぶ声。

つくづく悪いことをしたと思いました。